盲ろう教育の歴史

 日本で初めて盲ろう児教育が行われたのは、1949年(昭和24年)のことです。当時の山梨
県立盲唖学校校長堀江貞尚が、県下の盲児とろう児について実態調査をする過程で、2名の
盲ろう児に出会ったことから始まっています。これをきっかけに、1952年(昭和27年)には東
京大学教授梅津八三らを中心とする「盲聾教育研究会」がつくられ、盲ろう教育研究の端緒が
開かれました。そして、山梨県立盲学校の盲ろう児教育は、現場の教師・寮母や研究者の協
力によって約20年間続けられました。その後、教師・研究者らによって「日本盲聾児を育てる
会」が結成され、全国各地の盲ろう児やその家族、教師らの結束を図る試みがなされました。
1971年(昭和46年)に設立された国立特殊教育総合研究所には、盲聾教育研究室が設け
られ、国立久里浜養護学校や財団法人重複障害教育研究所をはじめ、いくつかの盲学校、聾
学校においても、盲ろう児に対する教育の貴重な試みが実践されてきました。しかし、個々の
研究や教育実践を共有する場がなかなか持てないまま、時が推移しました。
  盲ろう教育をめぐるもう一つの動きとして、東京都立大学へ進んだ盲ろう青年の支援活動を
きっかけに、1991年(平成3年)に社会福祉法人全国盲ろう者協会が設立されたことがあげ
られます。この設立によって、日本でも、行政レベルによる盲ろう者に対する施策が、スタート
しました。
 同協会では、様々な盲ろう福祉施策に取り組む一方で、盲ろう教育に経験のある教師・研究
者を集めて、「盲ろう教育手法開発委員会」を作り、盲ろう教育の研究にも取り組んできまし
た。そして、1991年(平成3年)、「盲ろう教育研究紀要」が発刊され、今日までに6号を数える
に至っています。当紀要において、盲ろう児教育に関する文献や優れた実践報告等が紹介さ
れてきました。この委員会のメンバーによる活動は、その後、紀要の発行だけでなく、全国の
盲ろう児とその親によるワークショップなど、様々な活動を展開するようになりました。これらの
活動や、国立特殊教育総合研究所が全国の学校を対象に行った実態調査等によって、学齢
期にある盲ろう児童・生徒の実態も、徐々に明らかになってきました。