全国盲ろう教育研究会 第3回研究協議会報告

 会長あいさつ(全国盲ろう教育研究会第3回研究協議会「開会のあいさつ」より)

 開会の挨拶をする中澤会長 開会の挨拶をする中澤会長

 全国盲ろう教育研究会は、2003年に設立されました。その設立の目的は、目と耳の両方に
障害を併せ有する「盲ろう児・者」の教育及び福祉に関わる多様な事柄を研究し、その向上に
寄与することです。会員は、盲ろう教育にかかわる学校教員、盲ろう当事者、盲ろう児・者の家
族、盲ろう者友の会、盲ろうの療育・リハ・医療・通訳介助等にかかわる専門家および研究者・
ボランティア・学生等、盲ろう児・者の教育と福祉に貢献し、情報を分かち合う意欲のある人々
を対象としています。今回も、この設立目的にふさわしい多様な参加者をお迎えしていること、
研究会の役員一同、心強く感じております。

 各地においては、なかなか入手することができない盲ろうに関する国内外の情報を集めて、
会員の間で共有する広場になることも、研究会の一つの役割です。

 6月来の僅か3ヶ月のあいだにも、盲ろうに関する重要な集まりが4つありました。その概要
を、皆様と共有したいと思います。
6月には、フィンランドにおいて、第8回ヘレンケラー世界会議と世界盲ろう者連盟第2回総会
が開かれました。これは4年に一回開催される、盲ろう当事者の国際会議です。独自のニーズ
をもつ障害としての「盲ろう」の認識を、世界規模で推進する強力な会議です。大きな動きとし
ては、世界盲ろう者連盟が確実に国際障害者組織として世界的に認知されていること、国連
の障害者権利条約の策定に国際障害同盟の一員として関与していることでしょう。また、アフリ
カの国々が、アフリカ障害者の十年をてこにして、盲ろう者への支援を進め始めていて、次期
第9回ヘレンケラー世界会議と世界盲ろう者連盟第3回総会を南アフリカで開催することが決
定したことです。日本にとっても大きなニュースがあります。8年後に開催される、第10回ヘレ
ンケラー世界会議と世界盲ろう者連盟第4回総会を、日本で開催することを立候補したことで
す。アジアで開催される初めてのものです。日本の盲ろう者にとって、そしてアジアの盲ろう者
にとって、大きな契機となるものと思われます。

 7月には、二つの盲ろう児と家族の集まりがありました。
一つは、徳島の山奥の美しいキャンプ場で開かれた、四国の盲ろう児と家族のとても清々しい
夏の集いでした。盲ろう児の家族が団結して、集まりをもったのは、実は愛媛が初めてでした。
その行動力が、多くの盲ろう児の家族を鼓舞し、その後の各地の盲ろう児の家族の力を結集
するきっかけとなったのです。

 7月末には、CHARGE夏の集いが横浜で開かれました。
34家族という多くの方々が日本各地から集まりました。CHARGEについて熱心に取り組んで下
さる医療専門家との連携がさらに広がり、夏の集いには遺伝学、歯科、内分泌の医師が複数
協力され、会員の質問への丁寧な医療情報の提供が行われました。CHARGEの認識が徐々
に広がっているようで、1歳、2歳で診断を受けた子どもさんが多数参加されていました。また、
聾学校の先生方が多数参加され、聾学校におけるCHARGEにかかわる教員同士のネットワー
クづくりの必要性を、私のみならず、多くのご家族や教員が感じました。

 そして、8月初めに、盲ろう児と家族の会「ふうわ」の夏の集いが東京で開かれ、24家族が
日本各地か集まりました。互いの成長をたしかめ学び合い、新たに参加した家族を励まし、家
族を含めて夏の数日を楽しく過ごすこの夏の集いも、「ふうわ」の設立から2年を経て、少しず
つ変化を見せていました。夏の集いを担うご家族の幅が広がっていることと、夏の集いを家族
の「研修」の場としても位置づけるようになっていることです。

 見ますと、「当事者と家族」の力が今、盲ろうの教育と福祉を牽引し始めていることを感じま
す。一つ一つのうねりは小さくとも、日本各地、そして世界のうねりが共鳴して、大きな動きにな
っていっているように思います。

 20日からは、全国盲ろう者大会が横浜で開かれます。久しぶりに開かれる全国大会、これ
も大きなうねりを起こす渦となることでしょう。

 翻って、この全国盲ろう教育研究ははどのような立ち位置にいるでしょうか?。会場を見回す
と、いま申し上げた重要な変化に関わるかたがたのお顔が見えます。これは、この研究会のま
さに目指すところです。すなわち、盲ろう児者にかかわる多様な人々同士の学びの広場になる
こと。研究会自体は渦ではありません。各地でうごく渦がなにかをお互いに知ることを促す中
で、おおきなうねりをつくっていく、それが研究会のもつ力だと考えております。


全国盲ろう教育研究会 第3回定期総会・研究協議会報告
 2005年8月17日(水)から19日(金)まで、独立行政法人国立特殊教育総合研究所を会場
に全国盲ろう教育研究会 第3回定期総会・研究協議会を開催いたしました。
 北は北海道から南は福岡まで、盲・聾・養護学校の教員、福祉施設指導員、盲ろう児童生徒
の保護者、通訳介助者、大学教員、研究者、協会職員、学生など89名(盲ろう児生・ボランテ
ィア・通訳者をのぞく)の方の参加がありました。
 講演や実践報告に共感・感動し、10のポスター発表に耳を傾け、分科会や情報交換では大
いに語り合った3日間でした。保護者の方と参加した盲ろう児童生徒10名も手づくりのウオー
ターベットで遊び、プールや海をたっぷり楽しみ、かき氷パフェなどのおやつを作ってニッコニ
コ・・・。自然博物館のタッチプールで生きたタコを触ったり、おやつの買い出しでも盛り上がっ
ていました。

 「盲ろう児のコミュニケーションと教材を通しての学習」と題しての横浜訓盲学院 学院長 塙
  忠蔵 氏の講演では、遊びを中心としての身振りサインの導入や発信・受信の関係づくりや
指文字への導入について、具体的な事例を示しながら話しがされました。また、心の相互関係
を築き、自発的な行動や興味・関心を導く教材は、個々にあわせてつくるものであり、その教
材づくりのポイントをいくつかの手作り教材を提示しながらお話しくださいました。

 2日目の「豊かな生活にむけての家庭・学校・友の会の連携」と題しての徳島からの実践報
告は、保護者・学校・友の会の3者から報告がありました。保護者の方からは、生まれてから
今日まで、触覚を利用して手の平に「行く」「帰る」などのサインでコミュニケーションをとってき
たこと、相手を意識し、思いを伝えようとする力をつけてきていることなどについて話しがされま
した。また、教員からは、学校の中での学習環境ややりとり、友の会からは、地域での様々な
生活を豊かにしていく取り組みなどについての報告があり、連携の大切さを再認識しました。
また、ポスターセッションや4分科会(乳幼児期、学齢期、成人期、盲ろう児生を初めて担当し
たあなたへ)、情報交換などでは時を惜しんで、語り合う姿があちこちでみられました。

 なお、1日目の夕刻に行われました定期総会では、活動報告・計画、決算報告・予算につい
て提案通り承認され、役員については、中澤恵江会長はじめ、現役員の留任が決定しました。
定期総会・研究協議会開催にあたりましては、通訳者、ボランティアの方をはじめとして多くの
方々のご協力を得ましたこと、心より感謝申し上げます。
(詳細については、会報にて報告いたします)